好きなものを好きなように書き散らかす二次創作サイト。
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「あの、イザヤールさま」
「なんだ?」
「今日は、どうして私を誘ってくれたんですか?」
二人は公園通り沿いの小さなカフェの中、丸テーブルの席で向かい合っている。
アンジュはお気に入りの生クリームロールケーキ、イザヤールは珈琲ケーキをそれぞれ注文し、舌鼓を打ちながら昼下がりを楽しんでいた。
今までにも、二人でこの店を訪れたことはあった。だがその時は、いつもアンジュから誘いがあった。
イザヤールの方からアンジュを誘ったのは、今回が初めてだ。
「私がお前を誘っては、いけなかったか?」
そう言いながらイザヤールが笑みを深くすると、アンジュは「い、いえっ!」と慌てて首を振った。
「いえ、あの、いけないとか、そういうことじゃなくて……その、嬉しい、です、けど……イザヤールさまが誘ってくれたの、初めてなので、どうしてかな、って……」
だんだんと声を小さくしながら答えるアンジュの頬は、うっすらと赤く染まっている。
少し意地悪な言い方だったか、とイザヤールは少しだけ反省した。このように言ってしまっては、「そんなことはない」と言うしかなくなってしまうだろう。
しかし心は正直で、口角が上がるのを抑えることができなかった。
「今日が何の日か、知っているか?」
「えっ?」
答える代わりにイザヤールが問いかけると、アンジュは一瞬目を丸くし、眉間に皺を寄せて首を捻った。
そしてそのまましばらく黙って考え込み、やがて小さく口を開いた。
「……もしかして、何かの記念日……なんですか? 今日はそのお祝い、とか……」
「まあ、そんなところだ」
「ほ、本当にそうなんですか!? すみません、私、何の日なのかわからなくて……」
小さく頭を下げ、しゅんとするアンジュに、イザヤールは「そんな顔をするな」と笑いかけた。
アンジュが気に病むことではない。あれは遠い過去のこと――覚えていなくても、無理はないのだ。
「実はな。今日は……」
「待ってください、イザヤールさま!」
答えを言おうとしたその時、アンジュが片手でイザヤールを制した。
「どうした?」
「少し、時間をくれませんか? 自分で思い出してみせますから!」
アンジュは胸に手を当て、まっすぐな視線をイザヤールに向けた。ここは譲れないと言わんばかりに。その真剣な眼差しを受けて、首を振ることはできなかった。
「わかった。では、明日になるまで待って、それでもわからなければ答えを言おう。それでどうだ?」
「はい、ありがとうございます!」
ぱあっと表情を輝かせたかと思うと、次の瞬間には、アンジュは顎に手を当てて再び考え始めていた。
イザヤールは無言のまま、その様子を見つめていた。自分の問いに対して、こんなにも一生懸命になってくれている――そう思うと、目の前の少女がますます愛しく思えた。
(……お前を選んで、本当によかった)
アンジュを見つめるうち、イザヤールの心は、自然とそう呟いていた。
この日は、全ての始まりの日。
アンジュが、イザヤールの弟子になった日だ。
師弟として過ごし、女神の果実が実った日に引き離され、敵対する立場として再会し、一度は死したが、その後人間として彼女の元へ戻り、想いが通じて恋人となり、こうして今、共に生きている――その最初の一歩を、かつてこの日に、二人は歩き始めたのだ。
今日はその記念日を共に過ごしたいと思い、こうしてアンジュを誘ったのだが、何の日か思い出そうと必死に考えているアンジュの様子を見ていると、まだその事は言えそうにない。
だから心の中で、イザヤールは彼女に告げた。
(私のもとへ来てくれて、本当にありがとう……アンジュ)
声に出して伝えたとき、彼女が見せてくれるであろう満面の笑みを、思い浮かべながら。
拙いですが、DQ9の3周年記念の小話でした。
この日は私にとっても、はじまりの日。
DQ9を購入して、うちの子が生まれて、お話を書いてサイトを作って、お友達ができて交流が深まって……今の私につながる様々なことが、DQ9をきっかけにして始まりました。
DQ9がなければ、今の私はなかったと思います。冗談じゃなく(笑)
なので、ありがとうの気持ちをこめて、このお話を書きました。
……といっても実際3周年は昨日だったんですが(汗)
私が購入したのは翌日12日だったからということで、一日遅れですがご了承ください←
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