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気づけば半年ぶりの更新となってしまいました……(滝汗)



が、ようやく完成しました!
ずっと書きたいと思っていたものの一つ、クロードの過去話!
別名、「クロード、オオカミアタックを覚える。」(笑)







 















--------------昔の話を













いやあ、本当に驚いたよ。まさかこんな形でお前たちと再会することになるなんてな。
さっきは助かった。お前たちが来てくれなかったら、魔物の一撃をまともに食らって、動けなくなってたところだったよ。ありがとうな。


……ん? ああ、悪い。紹介が遅れたな。


こいつらは、俺の大事な友達だ。こっちがデュークで、こっちがトール。……ああ。オオカミだけど、友達なんだ。
なんだ、オオカミが人に懐いておとなしくしてるのが、そんなに意外だったか? 確かにオオカミは凶暴に見られがちだけど、みんながみんなそうってわけじゃないんだぞ? 中には人間に対して友好的な奴もいる。実際、俺はこいつらに命を救われたんだしな。


……そうだな。お前たちには、話しておくべきかもしれないな。
少し長い話になるけど、聞いてくれるか?


……わかった。じゃあまずは、野営の準備をしてから、だな。





こいつらと初めて会ったのは……もう十年くらい前になるな。俺が家族や仲間と一緒に、旅してたときのことだ。
え、ずっとエラフィタにいたんじゃないのかって? ……違う違う。
確かに俺は前に「エラフィタから来た」って言ったけど、実はあれ、半分嘘なんだ。
確かにエラフィタに滞在してた時期はあった。けどそれは、数年間宿屋暮らしをしてただけのことで、あの村で育ったわけじゃないんだ。
ほら、村の中に俺の家はなかっただろ? あれは誰かに貸したり売ったりしたんじゃなくて、元々家を持ってなかったからなんだ。

……俺に、『故郷』って呼べる場所はない。物心ついた時からずっと旅暮らしで、エラフィタに来るまでは、一つの場所に留まったことなんてなかったからな。


俺は、世界中を渡り歩く移動商隊の中で、生まれ育ったんだ。


20人にも満たない、小さな隊だった。一家で行商をしてたいくつかの家族が、魔物から身を守るために一緒に行動しているうちに、いつの間にか隊になったらしい。だから隊員のみんなは、商売仲間っていうより、家族同士みたいな関係だった。
馬車に商品をたくさん積んで、色んなところを旅したよ。
街に着いた時には、親が商品を売り買いしてるのを隣で見たり、キャンプを張る時にはそろばんをはじく練習をしたり、魔物から身を守る手段として剣を教えてもらったり……そんな日々が、ずっと続いてた。
あの頃は、俺もいつかは親の後を継いで商人になるんだろうって思ってた。……けど、そうはならなかった。
その原因になった事件が起こった時に、俺は、こいつらと出会ったんだ。



きっかけは、何日間も続いた悪天候だった。
その時、俺たちはエラフィタに向かって歩いていたんだけど、雨と風のせいで思ってた以上に移動が遅くなった。
本当ならエラフィタ地方南部まで進んでいるはずの日に、まだウォルロ地方にいて、セントシュタイン地方に辿り着いてすらいないっていう始末だ。このままのペースだと、とても約束の日には間に合わないってことがわかった。
エラフィタにはそれまでにも何度か商売に行ったことがあって、次に行く予定の日を、あらかじめ伝えてある。だから、遅れるわけにはいかなかった。村の人たちにも迷惑がかかるしな。
それにエラフィタでは、俺たちみたいな行商人からしか買えない珍しい品物を手に入れるために、俺たちが来る日に合わせて、旅に出た人や、別の町に働きに行っていた人が戻ってくるっていうことも少なくなかった。到着が大幅に遅れたりなんかしたら、大事な客を逃すことになりかねない。
そこで、隊長がルートを変えることを提案した。ウォルロ地方から山を越えて、エラフィタ地方に出るっていう方法だ。
あまり知られてはいないけど、ウォルロ地方には、旅人が通るための山越えの道がある。そこを通ればセントシュタイン地方を経由しなくてもエラフィタ地方に行けるし、山道を出て橋を渡れば、村はすぐ近くにあるんだ。
山越えは厳しいけど、このルートを通れば移動距離も短くなるし、約束の日にも間に合う。それに、今までにも何度か通ったことのある道だったから問題ないだろうってことで、満場一致で山越えが決まった。


……その結果、俺たちは魔物の群れに襲われた。


そこまで強い魔物じゃなかった。商隊のみんなが戦えば、確実に勝てる相手だった。
けど、襲われたタイミングが悪かった。ようやくエラフィタの景色が見えて、もうすぐ山を越えられるって思った時だったから、みんな少し気が緩んでいたんだ。
魔物たちはその隙を突いて、一気に攻め込んできた。突然のことで反応が遅れて、俺たちはいきなり不利な状況に追い込まれた。武器を取る前に攻撃を受けた人もいた。
俺は他の子供たちと一緒に馬車の中に隠れたんだけど、斬撃の音とか、誰かが倒れる音とか、仲間を助けようとする声がずっと聞こえてたから、みんなの必死な様子は手に取るように伝わってきた。……こんな戦いは、初めてだった。俺はただひたすら、息を殺して戦いが終わるのを待つしかなかった。
そのうち、少しずつ戦いの音が小さくなって、みんなの声だけが聞こえるようになっていった。もう大丈夫だろうか、って思って外に出た瞬間、魔物の放った魔法で、馬車が半壊した。……その魔物はすぐに倒されたけど、あの時ばかりは、背筋が凍ったよ。
やっとの思いで、俺たちは戦いに勝つことができたけど、被害は大きかった。
馬車が壊れたことで商品もほとんど駄目になったし、何より、隊員のうち何人かが、魔物から毒を受けていたんだ。
厄介なことに、その毒は少し特殊でな。魔物そのものが持っていた毒と、植物性の毒が混じり合っていたらしい。身体に回るのが早い上に、一般的に使われている毒消し草だと治せない、強い毒になっていたんだ。あの魔物、毒草を食べることで、より強い毒を自分の中で作り出していたんだろうな。
その時俺たちは、強い毒でも治せる薬を偶然持っていた。毒を受けた隊員たちは、すぐにそれを使おうとしたんだけど……そうじゃない隊員たちが、それを拒否した。
理由は単純。それが、唯一無事だった商品だったからさ。
売りに出せるものは、少しでも残しておきたかったんだ。特にあの薬は、当時は高く取引されるものだったからな。
ほら、お前たちも知ってるだろ? 『超万能薬』。
今でこそあの薬は錬金で作れるけど、あの頃はまだ作り方が知れ渡ってなくて、生産量の少ない、貴重なものだったんだ。
拒否された隊員たちは当然、商品のために仲間を犠牲にするのか、って反発したよ。けど、使うことはできない、って姿勢が変わることはなかった。
商品は商隊の命綱だ。売り物がなくなるってことは、金を稼ぐことも、次に売るためのものを買うこともできなくなるってことになる。結果的に、隊の存亡にも繋がる。極端な言い方だけど、商品を失えば、俺たち全員が命の危険にさらされることになるんだ。……今思えば、みんなあの時は、生きるために必死だったんだろうな。
やがて隊員の一人が、力づくで薬を奪おうと、毒を受けなかった隊員に襲いかかった。……それに他のみんなも続いて、隊員同士で、薬の奪い合いが起こった。
さっきまで魔物に向けていた剣を、今度は仲間に向けて、魔物と戦う時よりずっと恐ろしい形相で、互いに仲間を斬りはじめたんだ。
……その光景が怖くて、見ていられなくなって、俺は一人でその場から逃げ出した。なりふりかまわずに走り続けて、気がついたら、風の音しか聞こえない森の中にいた。そこでしばらく、空を見上げながらぼうっとしてた。
ようやく気持ちが落ち着いてきたのは、日が落ちかけた頃だった。俺はおそるおそる、元来た道を戻っていった。何事もなく……っていうのは無理だと思うけど、あの争いが終わっていることを、祈りながら。
その途中、何かがおかしいって気づいた。
静かすぎたんだ。みんなのいる所には確実に近づいているのに、物音も、人の声も聞こえない。
嫌な予感がした。焦るような気持ちで走って、さっきの場所まで辿りついた。
……そしたらさ。


みんな、死んでたんだ。
父さんも、母さんも、隊長も、他の隊員たちも、一人残らず、血染めになった土の上に倒れてた。


薬を奪おうとして争い合った結果、双方共に力尽きたんだと思う。中には、毒が回って死んだ人もいたかもしれない。
俺の友達……同い年の奴や、年下の子供たちもみんな斬られて死んでた。巻き添えを食らったんだろうな。


……人間ってもんが、怖くなったよ。
ずっと一緒に旅をしてきて、ほんの数時間前までは力を合わせて戦っていた仲間同士が、小さなきっかけで、殺し合う敵同士になる……その事実が、怖くてたまらなかった。


ショックのあまり、俺はまた森の中に駆け込んだ。
そして今度こそ、何もできなくなった。食べることも飲むことも、多分寝ることもしないで、大きな木の幹に身体を預けているうちに、けっこうな時が過ぎていた。それが数時間なのか、それとも数日間なのかすら判断できないくらい、あの時の俺は憔悴していたんだ。
死ぬのを待つだけの状態だった。……いや、寧ろそうなりたかったのかもしれない。こんなことになるなら、自分もみんなと一緒に死んでいた方が良かった……って、思わないこともなかったからな。
けど、そんな俺を、こいつらが……デュークとトールが、助けてくれたんだ。



目の前に二匹のオオカミが現れたときは、「ああ、俺こいつらに襲われて死ぬのかな」って思ったもんさ。
だけど俺の予想に反して、こいつらは、俺の様子をじっと見た後、背中を向けて森の奥に走っていった。しばらくして戻ってきたと思ったら、木の実を口にくわえてたんだ。それを俺の側に置いて、戻っていって、また木の実を持って来て……それを何度も何度も繰り返した。
そして、木の実が小さな山を作ったあたりで、こいつらは俺の目の前から動かなくなった。俺がこれを食べるまでここから動かないぞって言いたそうにな。……おかげで、食べざるを得なくなった。こいつらがいてくれたから、俺はなんとか生き延びることができたんだ。
それでもまだ、身体と心が回復するには至らなかった。生きているのがやっと、ってところだったな。
そこから救ってくれたのは……俺の、もう一人の命の恩人だ。



その時も、森の奥から誰かが来る気配があったから、またあいつらが来てくれたのかなってぼんやり思いながら見てたんだ。けど違った。木々の間から草をかき分けて現れたのは、魔物だったんだ。
今までにないくらいの殺気を感じた。逃げようとしたけど、体力なんてほとんど残ってなかったから、立ち上がることすらできなかった。魔物は俺にゆっくり近づいて、立ち止まると、思い切り腕を振り上げた。
今度こそ死ぬんだって思った次の瞬間、倒れていたのは、俺じゃなくて魔物の方だった。
よく見ると、倒れた魔物の後ろに人が立っていた。その人が、右手に持っていた剣を鞘に収めたのを見て、俺はようやく、助けられたんだっていうことを理解した。
歳は今の俺より少し年上ぐらいだと思う。優しい目をした、男の人だった。
今だからわかるけど、カルバドから来た人だったんだと思う。服装が、集落の人たちと同じだったからな。
その人は、「無事でよかった」って俺に言った後、「デューク、トール、こいつだな? お前たちが言ってたのは」って言いながら、両隣に視線を向けた。
同じ方に目をやると、その人の隣には、二匹のオオカミ……こいつらの姿があった。知り合いらしいことに驚きながらも、俺は少しホッとした。
けど、その人が歩み寄ってきた時、俺は思わず後ずさろうとした。……魔物も怖かったけど、それと同じくらい、人間のことも怖かったんだ。俺のことを気遣ってくれてるっていうのはわかってた。でもこればっかりは、どうしようもなかった。
そんな俺を見ながら、その人は片膝をついて、俺に視線を合わせて言ったんだ。「人が、怖いのか?」って。
何とか答えようとはしたんだけど、長いこと喋ってなかったから、上手く声を出すことができなかった。
きっとそれに、その人も気づいてくれたんだろう。「……そうか、辛い思いをしたんだな」って、そっと頭を撫でてくれた。
そして目を細めて笑いながら、こう言った。
「俺はお前が心配で、お前を助けたいと思ってる。だからまずは、俺を信じてみないか? ……頼む。信じることを、諦めないでくれ」
……その言葉は、驚くほど自然に、俺の心にすっと入り込んでいった。



それから俺は、その人に連れられてエラフィタに向かった。
山を下りる途中、少しだけその人の話を聞くことができた。たった一人で世界中を旅していること。デュークとトールには以前この山の中で出会って、友達になったこと。二人から俺の話を聞いて、助けにきてくれたんだってこと。
オオカミと話ができるっていうのは、信じがたい話だったけど……レンジャーの資格を得た今なら、少し分かる気がするよ。
俺は村に着いてすぐ、宿屋に預けられた。宿の人たちは、やつれきった様子の俺を見て、すぐに食事を用意してくれた。人が作ったものを食べるのは、ずいぶんと久しぶりな気がした。
その後も村のみんなは、俺が回復できるように心を砕いてくれた。ただでさえ部屋が少ないっていうのに、俺を宿の一室に住まわせてくれて、何度も何度も、俺に話しかけてくれた。そうしているうちに、俺は少しずつ、気力を取り戻していったんだ。かなり遅くなったけど、商隊が全滅したこともみんなにちゃんと話したよ。
ああ、あの人のことか?
……俺が宿屋に着いた後、いつの間にかいなくなってたんだ。後から聞いた話だと、俺の宿代も、あの人が出してくれてたらしい。
結局俺は、お礼を言うどころか、あの人の名前を聞くことすらできなかった。
そのことも手伝って、かもしれないな。
年月が過ぎるうちに、あの人に対する憧れが、俺の中で大きくなっていった。あの人のように強くなって、人を助けられるようになりたい。そしてできるなら、もう一度会って直接お礼が言いたい……そう思うようになったんだ。
それで俺は、独学で剣を鍛えて、傭兵としてセントシュタインに出て行ったんだ。



……ずいぶんと長く、話し込んじゃったな。
エラフィタ村の人以外で、昔のことを誰かに話したのは、お前たちが初めてだ。
最初に話せたのがお前たちで、よかったよ。聞いてくれて、ありがとうな。
……そうか? そう思ってくれたなら、俺も嬉しいよ。



……ん? どうした、お前たち?
あ、ちょっと待っててくれ。こいつらが何か言いたいみたいなんだ。
……え、本当か? ……ああ、頼む!



みんな、聞いてくれ。
デュークとトールが、これから俺たちの戦いに力を貸してくれるそうだ。
流石に俺たちと一緒に歩くことはできないけど、俺が呼んだらすぐに駆けつけるから、いつでも呼んでくれ、って言ってる。
……そうだな。今日からはこいつらも、俺たちの仲間だ。



こうして旅するようになるまで、俺には色々あったけどさ。
……ここにいる仲間と出会うためなんだとしたら、今までのことも、無駄じゃなかったかもしれないって、思えるんだ。
ありがとうな、俺の仲間になってくれて。
アンジュ、サティ、メル。お前たちには、本当に感謝してる。もちろん、デュークとトールにもな。



……みんなに出会えて、よかった。
これからも、よろしく頼むな。








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オオカミアタックからここまで話が広がるとは、自分でも思いませんでした。(笑)





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