クロードの日記③

ようやく天使界の問題に足を突っ込みます。（笑）








今回は、天使界から帰ってきた直後の日記です。

--------------クロードの日記③












……正直なところ、まだ信じられない。

今までの様子を見てもしかしたら、とは思っていたが……アンジュは、本当に人間じゃなかったんだな。しかも、俺たち人間を守護する立場――天使だったとは。
話を聞いただけでは、きっと俺はその事実を信じられずにいただろう。けれど、こうして天使界をこの目で見たからには、信じないわけにはいかないな。

ベクセリアで流行病の問題を解決した後、「故郷に帰る方法が見つかったかもしれない」って、アンジュが言い出した。どこでそんな情報を手に入れた、って聞いたら「それはこっちの事情で言えないけど、きっと帰れる」ってことだった。
そしたらサティが、「じゃあ、みんなで見送りに行こう」って提案した。結成したばかりのパーティがこんなにすぐに解散してしまうのが嫌だったのかもしれない。俺もそうだしな。
この四人で旅をするのは、アンジュが無事に故郷に帰るまで。だから、アンジュが帰るのを見届けないと、解散もできない。結局そういうことになって、俺たちはアンジュについていったんだが……着いたのはウォルロ村近くの峠の道。
一体ここに何があるんだ？　と思ってアンジュの後ろを歩いていたら、いつの間にか、自分の体が宙に浮いていた。とまどう間もなく、まばゆい光に包まれて……気が付いたら俺たちは、見たこともない乗り物の中にいた。どうやらこれは、空を飛ぶための乗り物らしい。アンジュには元々これが見えていたということだ。
俺たち三人は状況が飲み込めず、ただ顔を見合わせるばかりだったが、ふと前方のアンジュの隣に、誰かがいることに気が付いた。小さい体に、背中にある羽。……妖精、のように見えた。
そいつに話しかけられて初めて、アンジュは俺たちがついてきていることに気が付いたらしい。けれどアンジュは、「どこにいるの？」って、周りを見回すばかり。アンジュからは、俺たちのことが見えていないみたいだった。声も届かないらしい。アンジュもそれを理解したんだろう、「私からはみんなの姿が見えないから、絶対に私の傍から離れないで」と言っていた。

そうしているうちに、乗り物が止まった。アンジュについて外に出ると……空に浮かぶ世界、エラフィタの樹の数十倍はあろうかという大きな世界樹、そして目の前にいる天使。この時の驚きは、きっと一生忘れないだろう。
周りの天使の話を聞いていて、大体アンジュの事情がわかった。あいつは元々この天使界の天使で、この前の大地震があった時に地上に落ちてしまった。そして同時に、翼と光輪を失った、ということらしい。
その後アンジュは、元の姿に戻れるように世界樹の元で祈っていたが、そのまま眠ってしまった時は困ったな。姿が見えないんじゃ、起こすこともできない。
でも、眠っているときにアンジュは夢の中で何かを告げられたらしい。話を聞いたところ、「女神の果実」とやらを地上で探す必要があるらしい。アンジュは再び、地上に戻ることになった。もちろん俺たちも一緒に、だ。
戻ってきた後、改めてアンジュから事情を話してもらった。
天使の使命は、星のオーラを集めて女神の果実を実らせること。その果実が、地震の時に地上に落ちてしまったから、探して天使界に持ち帰らなければならない。アンジュは夢の中で、その役目を与えられたそうだ。
それなら、俺たちのするべきことは決まっている。
まあ当然だろうとは思っていたが、ここで抜けるという奴は一人としていなかった。これからはアンジュと共に、果実探しの旅をすることになった。やっぱりあいつ一人じゃ危なっかしいしな。
……いや、厳密に言えば一人じゃなかったんだが。
地上に戻ったとき、あの乗り物（「天の箱舟」というらしい）の中にいた、妖精みたいな奴のことをアンジュが紹介してくれた。名前はサンディ。箱舟の運転士で、アンジュが地上に落ちたばかりの頃から一緒にいたそうだ。今までは姿を見ることができなかったが、一度天使界に行ったことで、地上でも姿が見えるようになったのかもしれないな。

とにかく、これからは天使の事情に関わる旅だ。
一体何が待ち受けているのか……不安でもあるが、やっぱりワクワクするな。冒険者の性だろうか。

 

……そういえば、サティとメルの奴、天使界に来たとき何か様子が変だったな。サティなんて今にも泣き出しそうな顔になってたし……まあ、人間の身で天使界に来たとなれば、冷静ではいられない、か。

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ここでようやくアンジュと同じものが見えるようになりました。
一応、うちのメンバーは一度天使界に行ったことで、天使と同じ目を手に入れた、ということになってます。
でも人間なので、天使界や天の箱舟の中に入ると姿が見えなくなってしまいます。


サティとメルのことも最後にちょっと書きましたが、この二人の事情もいつか書きたいとは思ってます。
設定もきっちりあるので。