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大変、長らくお待たせいたしました……(汗)




そもそも前編を上げてから何ヶ月たってるんだって話だし
捏造解釈ありまくりだし
結局ぐだぐだ気味になっちゃったし






なんかもう、色々許して下さい。(土下座)






















--------------終わりを告げる夜(後編)











見上げると、満月だった。
もうすっかり夜も更けている。大通りには、人の姿も見えない。
外に出てしまうと、酒場の賑わいも嘘のように聞こえなくなった。耳に入るのはかすかに風が鳴る音と、自分たちの足音のみ。
静かな場所で話したいから、とクロードが向かった場所は、宿屋と城壁に挟まれた、裏路地だった。
「……ここでいいよな?」
その言葉と共にクロードは歩みを止め、振り返った。彼の後ろを歩いていたイザヤールもまた立ち止まり、ゆっくりと頷く。
「ああ。……話とは、何だ?」
「……単刀直入に聞かせてもらう」
星々の光が照らす中、クロードはまっすぐに、イザヤールを見据えた。
「あんた、自分が一度死んだことを覚えているか?」

 

クロードの言葉に、イザヤールは息を呑んだ。
見開かれたその目からは、驚きと戸惑いが見える。しかし、それはすぐに、苦い表情へと変わった。クロードはその表情から、一瞬たりとも目をそらさない。
「どうなんだ?」
答えを促されると、イザヤールは俯き、目を閉じた。
そしてしばしの沈黙の後、顔を上げ、静かに口を開いた。
「……ああ、覚えている」
「……やっぱりな。そうだと思ってた」
表情一つ変えないクロードに、イザヤールは続ける。
「私は確かに、一度死んだ。そう思っていた。……だが、気がついたときには、生きた体でガナン帝国城に戻って来ていたのだ。ガナサダイを斬った、その瞬間の状態で。……戻ってきた時には、城には誰もいなかった。そこで私の目の前にセレシア様が現れ、あの戦いの先に何があったかを告げられたのだ」
「つまり、あの戦いが終わった時のガナン帝国城に、あんたは戻ってきたわけか。それで天使から人間になって、ウォルロ村に来たと」
「……そうだ」
その言葉が耳に入ると同時に、クロードは思わず拳を握った。

 

 

運命が変わったことによって、イザヤール自身の記憶も変わってしまったのだろうか、と最初は思ったが、そうではないとクロードにはすぐにわかった。
イザヤールはこう言った。あの不思議な来訪者がアンジュだったということが、今になってわかった、と。

女神のいのりを渡しに来たのは、人間の身となったアンジュであった。彼女がいずれ人間になるということを知るよしもないイザヤールからすれば、未来のアンジュということになる。言うまでもなく彼女は、ガナン帝国の戦いを終えた後のアンジュだ。
その未来のアンジュがイザヤールに渡した女神のいのりの力によって、イザヤールは命を取り留めた。
――では、アンジュが過去のイザヤールに会いに行く前はどうなっていたのか?
当然、イザヤールが女神のいのりを手にすることはなくなる。すなわち、『女神のいのりが存在しなかった場合の戦いの結末』を、アンジュは経験していることになる。
彼女が起こした『イザヤールの運命を変える』という行動は、それを知っているからこそできたことだ。
そして、女神のいのりがなければイザヤールはガナン帝国の戦いで命を落としていただろう、ということは彼自身が身をもって実感している。
つまり、今のイザヤールは覚えている――仮に覚えていなくても、理解しているはずなのだ。自分が一度死んだということ、アンジュが一度自分を喪っているということを。

 

イザヤールの言葉を聞き、それは今、確信へと変わった。
もう、立ち止まる必要などない。

 

 

「だったら……」
クロードはつかつかとイザヤールに歩み寄り、強引にその右肩を掴んだ。乱暴と言われてもおかしくないくらいの力を込めて。
「だったら、なんでアンジュに言わないんだよ!? なんで一番大事なことを言わないんだよ!?」
クロードはなおも、イザヤールをきっと見据える。
視線が耐え難かったのか、イザヤールはクロードから目をそらした。しかし、逃がすまい、とでも言わんばかりにクロードの言葉は続いた。
「自分も人間になった、これからは共に地上を守りたい、よろしく頼む――それで……それだけで終わらせるつもりかよ!? 死んだ時のことを覚えてるなら、アンジュに言うべきことは他にあるはずだろッ!?」

 

 

アンジュが、ウォルロ村の天使像の前でイザヤールとの再会を果たしたとき。良かったな、と素直に祝福する心の片隅で、クロードはこう思わずにはいられなかった。


――一言くらい、謝罪の言葉があってもいいじゃないか。


かつてガナン帝国城で、アンジュと言葉を交わしていたとき。確かにイザヤールは、アンジュを欺いてしまったことだけが心残りだった、と言っていた。しかしそれだけでは、ちゃんとした謝罪の言葉を聞いたことにはならない。
それに、一度死んだ身から蘇っておきながら、アンジュを悲しませたことに対する謝罪が一言もないというのは納得できなかった。――自分が一度死んだということを、彼は理解しているのだろうと思っていたから、なおさら。

 

 

「……そうだな。アンジュには、どんなに詫びても足りないことをしたと思っている」
イザヤールが呟くように答える。その声には、少しのため息が交じっていた。
「わかってるなら、なんで……」
「――許されたくないのだ」
「……何だって?」
イザヤールは再びクロードに顔を向けた。しかしその目は自分ではなく、どこか遠くを見ているように、クロードには感じられた。
「アンジュは、とても優しい心の持ち主だ。私が今までのことを詫びたとしたら、あいつは笑顔で私を許してしまうだろう。……そのようなことが、あってはならない。私は、許されるわけにはいかない」
「許されるわけには、いかない……?」
黙って頷いたイザヤールに、クロードはつかみかかるように詰め寄った。
「ちょっと待てよ。ならあんた、何のためにアンジュに会いに来たんだよ? 地上を守ることならアンジュと一緒じゃなくてもできるし、許されたくないなら、アンジュからずっと離れていればいいだろ?」
もっとも、俺はそんなことを望んでなんかないけどな――クロードは、胸の中だけでそう続けた。
イザヤールの目はその問いを受け、今度こそクロードの目をとらえる。
「それが――」
重く、厳めしい口調で、彼は告げた。
「――私の償いだからだ」

 

 

「ふ……」
思わず声が口を突いて出た。体が震えているのが分かる。
高ぶる心が、体に追いつかない。
気づいたときには、

「ふざけんなっ!!!」

掴んだままだった肩を、思い切り突き飛ばしていた。イザヤールはその勢いで、よろめきながら二、三歩後ろに下がる。
「そんな気持ちで側にいられて、アンジュが本当に喜ぶとでも思ってんのかよ!?」
あふれ出す言葉は、留まることを知らない。クロードは激情にまかせて、次から次へと思いを叩きつける。
「大体な、その償いってのはセレシア様が言ったことなのか!? 違うだろ!? あんたが勝手にそうだって思い込んでるだけだろ!?」
「それは、」
「――あんたの短所、どこか教えてやろうか」
答える暇さえも、与える気はない。
「一つ。一度こうだって思ったら、考えを曲げない。一つ。なんでも自分がやらなきゃいけないと思って、一人で突っ走る。――一つ。周りのために、自分を犠牲にすることを厭わない。……ほんの少しの間しかあんたを見ていなかった俺でも、わかったことだ」
それは言い方を変えれば、長所であるともとれる。何があっても自分の信念を貫こうとするその心に、アンジュは惹かれたのだろう。クロード自身も、そんなイザヤールの性格を認めていた。
「確かに、それが良い結果を招くことだってあっただろうさ。けどな」
しかし、クロードはそこをあえて『短所』と言った。彼の信念がもたらしたものが何だったのかを考えると、そう言わずにはいられなかった。
「――それが、人の心を傷つけることだってある! いい加減気づけよ!!」

 

イザヤールはもはや、何も言えなくなっていた。黙ったまま、痛みを必死に堪えるように歯を食いしばっている。
おそらく、彼の心にも同じ光景が映し出されているのだろう。アンジュが傷つき、泣き崩れたあの時の光景が。
「『大切な人を、これ以上悲しませたくない』んだろ?」
それは、イザヤール自身が言った言葉だった。女神のいのりが砕け散った時に、彼が願ったこと。だがその願いはまだ、叶えられたとは言えない。今のままでは。
「だったら、『償いのため』だなんて建前は捨てろ」
「建前……だと?」
重い口からこぼれた言葉に、クロードは答えた。
「ああ、そうだ。……俺は、あんたの今の気持ちを、まだ一度も聞いていない。本当の気持ちを抑えつけたまま側にいられても、アンジュがまた悲しむだけだ!!」
「私の、今の気持ち……」
言われて初めて、イザヤールは気づいたようだった。今まで自分が口にしてきたことの中には、自分の気持ちが含まれていないことに。
「私は……」
イザヤールはその心を、一度は口にしようとした。しかし、すぐに開きかけた口を閉ざし、目を背け、表情を曇らせた。
「納得できないか」
無理もないかもしれない。クロードが言っていることは、『罪を償おうとする気持ちを捨てろ』というのと同じ事なのだから。
だが、このままではいけない、とクロードは感じていた。イザヤールを、罪の意識に囚われたままにしてはいけないと。
イザヤールが今までの行いを悔い、償いたいという気持ちはわかる。しかし、その心を持ったままでは、アンジュの悲しみを本当の意味で取り除くことができなくなるのだ。
イザヤールは、なおも言いよどんでいる。こうなれば、もう行動で示すしかない。
「なら……これでどうだっ!!」
クロードは、強く地を蹴った。

 

一瞬にして、イザヤールとの距離が詰まる。
ひゅんと鳴る風を、かき集めるように掌の中へ。
それを、


イザヤールの頬に向かって、あらん限りの力で叩きつけた。

 

「ぐっ……!?」
まともに吹っ飛ばされはしたが、イザヤールは持ちこたえた。倒れる寸前に、体勢を立て直したのだ。クロードが全力を出したにも関わらず。
「さすが、あいつの師匠だな……そう簡単には倒れてくれないか」
そう言って拳を下ろしたクロードの口元には、笑みが戻っていた。
「……あんたの事が、気に入らなかったよ。アンジュの師匠だってのに、あいつを裏切って、傷つけて、あいつをさんざん泣かせたあんたが。……だから、もう一度会えたら一発殴ってやろうって、ずっと思ってた」
その笑顔につられたのか、イザヤールも苦笑を見せる。
「……見かけによらず、重い拳を放つんだな」
「悪い。けど、おかげで気が晴れた。今ので俺の中のあんたへのわだかまりは、全部なくなった」
クロードの声には、もう刺々しさは残っていなかった。
「俺はさ。確かにあんたがしたことを許せないと思ってたけど、あんたの事自体が嫌いなわけじゃないんだ」
穏やかな口調で、クロードの言葉は続く。
「アンジュだって、許す許さない以前に、一度だってあんたを憎んじゃいない。サティも、メルも。サンディだって、結構きつく当たってたかもしれないけど、あんたのこと、ちゃんと認めてるんだ。だから、あとはあんたがアンジュに謝って、それでチャラってことにはできないか?」
イザヤールは目を丸くした。そんなことを言われるとは思っても見なかった、と言わんばかりに。
「……参ったな」
独りごちるように言うと、イザヤールはクロードに向かって頭を下げた。
「……すまなかった」
「それを俺に言うなよ。あと、そう思ってるならちゃんと責任とれ」
「責任?」
顔を上げ、首を傾げるイザヤールにクロードは答える。
「アンジュのことを、大切にしてやって欲しい。今まで傷つけた分も含めて」
クロードの言葉を受け、イザヤールは心からの笑みを顔に浮かべた。強く固い決意を、その瞳に宿して。
「……ああ、約束する」

 

 

「……お前のお陰で、気づかされた。私が戻ってきたのは、償いのためなどではなかった。本当は……ただアンジュに会いたかった。もう一度、側にいさせて欲しいと思った。……それだけ、だったんだ」
「それが、あんたの今の気持ちか」
「ああ」
自分の心を縛るものが、ようやくなくなったのだろう。イザヤールはとうとうと語り続けた。
「思えば、天使として地上を飛び回っていた頃から、アンジュの存在はいつも心の中にあった。ガナン帝国にいた時も、あいつを忘れたことはない。斬りつけた時に見た涙は、ずっと目に焼き付いて離れなかった。……自分の命が潰えるというときになって、初めてわかった。私は――」
「――待った」
続きを言おうとしたイザヤールを、クロードは片手で制した。
「どうした?」
クロードはクスリと笑みを浮かべた。イザヤールは気づいていない。クロードの視線がイザヤール自身ではなく、その肩の向こう、彼の背後に向いていることに。
「いるんだろ? 出てこいよ。――アンジュ」
「なっ!?」
驚きの声を上げて、思わずイザヤールは振り返った。
宿屋の陰から、見慣れた桜色がのぞいている。それはイザヤールの声に肩をピクリと震わせて、ばつが悪そうにそっと姿を隠した。
「――その先は、本人に言ってやんな」
「お、おい……!」
悪戯を成功させた子どものような笑みを浮かべ、ひらひらと手を振って、クロードはイザヤールの横を通り過ぎていく。

 

アンジュは建物の角で、じっと固まっていた。
クロードの姿を認めると、申し訳なさそうに顔を伏せながら、上目遣いに見上げてくる。
その様子を見て、クロードはふっと微笑み、


「……じゃあな」


すれ違いざまに、こつん、と手の甲で頭を小突いた。

 

 

後ろから、足音がもう一つ響くのがわかった。
それは駆け足で遠ざかり、少しずつ、少しずつ、小さくなっていく。
クロードが宿の扉を開けようとしたその時、風の音にまぎれて、かすかに彼女の声が耳に届いた。


「――あの、イザヤールさま。わたし――」









 

――その先は、酒場の賑わいでかき消された。
 

 









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師匠、たくさん文句言ってごめんなさい。
クロード、ガラ悪く書いちゃってごめんなさい。

でもすごく楽しかった。(笑)



 

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